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「文句なしの内容」アリサ・リウが復活の世界選手権優勝!アメリカ人女子として19年ぶりの快挙| ISU世界フィギュアスケート選手権2025 女子シングル レビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部アメリカ人女子として世界選手権で19年ぶりの金メダルを獲得したアリサ・リウ
1位 アリサ・リウ(アメリカ)
まさにフェアリーテイル。かつての神童が、2年の空白を経て復帰したシーズンの終わりに、地元アメリカの観客の前で、美しいゴールドに輝いた。完璧な演技を2本揃えて!
「これは私にとって大きな意味を持つもので、前回のスケート経験や、離れていた時間を経ての今回があり……本当に幸せです。なによりも嬉しいのは、最高のパフォーマンスができたこと」(リウ)
ショートプログラム(SP)の滑走順は33人中の18番目。世界ランキングを上げるスピードよりも速く、高速でアメリカ代表への復帰を果たしたリウは、本人さえ目を丸くするような演技を披露した。3つのジャンプ要素を悠々と決め、あらゆるステップとスピンでレベル4。流れるようなスケーティングで描き上げる「Promise」は、しっとりと、瑞々しく、どこか夢のような時間だった。演技後にリウ本人も感極まって涙ぐんだほど。
「このプログラム自体がとても感動的で、それだけでも泣きそうなのに、再び世界選に戻ってこられたんだ……って。現実離れした気分です」(リウ)
SPで74.58点という高得点は、復帰後初めての国際大会における70点超えであり、パーソナルベスト(PB)。演技終了時点で暫定1位のスコアは、33人全員が滑り終わっても、首位のままだった。
「リラックスしているというより、興奮している」と語ったリウは、最終滑走のフリースケーティング(FS)でも、緊張をまるで感じさせなかった。地元ボストン出身ドナ・サマーの「マッカーサー・パーク」を、底抜けに明るい笑顔で、ひたすら楽しそうに舞い続けた。ゴールドのゴージャスな衣装をまとって。
その上、ジャンプはすべて完璧で、やはりあらゆるエレメンツにレベル4が並んだ。今大会の全4種目通して、ノーミスにしてオールレベル4のパフォーマンスを2本揃えたのは、ただリウ1人だけ。当然ながら148.39点という凄まじい得点を叩き出し――PBであり、今季のシニア全体で2番目の高得点――、1位の座を射止めた。
総合では222.97点で、リウが堂々たる世界チャンピオンとなった。アメリカ女子としては2006年以来となる19年ぶりの金メダルだった。
「こんな結果はまるで想像していませんでした。試合に臨む時、今の私はもはや、なにかを期待するということはないんです。むしろ大切にしているのは、『どんな演技を見せられるか』。今回はそれが思い通りにいき、文句なしの内容でした!」(リウ)
2位 坂本花織(日本)
涙で終えた大会だった。仲間の好演技を讃えて泣き、ライバルの優勝を喜んで泣き、4連覇を果たせなかった悔しさで泣き……。過去3大会を制した坂本花織が、今回は美しい銀メダルを手にした。
「演技直後は「よく頑張った!」という感情だったんです。でも、他の選手の演技を見ているうちに、泣きすぎて、感動しすぎて、感情がよく分からなくなってしまいました。アリサの優勝は心から嬉しくて、でも、今までで一番悔しい気持ちもわいてきました」(坂本)
5位で終えたSPは、決して悪くなかった。特に冒頭の2つジャンプは、大きく、流れるようで、問題なく今大会トップレベルの出来。ピアソラの音楽に乗せた、しっとり官能的に舞うプログラムで、他を大きく上回る演技構成点(PCS)も稼ぎ出した。
ただ最高の出来でもなかった。プログラム中盤で集中力を切らしてしまったようにも見えた。スピンやステップシークエンスでレベルを3に落とし、さらに後半のコンビネーションでは、1本目がパンクして2回転に。
FS前には「涙袋がパンパン」だったという坂本。ウォームアップ中に涙腺が決壊してしまったことすらあった。氷上では一転、コミカルな表情に切り替え、FS「シカゴ」を堂々と演じた。
スピードあるジャンプが繰り出されるたびに、アリーナは大歓声に包まれた。残念ながらジャンプで2つ回転不足を取られたものの、今度こそすべてのエレメンツをレベル4で揃えた。やはりPCSでは2位を2点以上も突き放す圧倒的な首位。音楽が鳴り止む前からスタンディングオベーションが起こり、自身もガッツポーズで喜びを爆発させた。
逆転優勝には届かなかった。首位のリウには4.99点及ばなかった。それでも4年連続で世界選表彰台に立つのは、日本女子初の快挙だった。
「4連覇は達成できませんでしたが、おかげで次は挑戦者として挑めます。これは五輪に向けて大事な経験で、この悔しさも、きっと今の自分にとって必要なものだったのだと思います」(坂本)
3位 千葉百音(日本)
2度目の世界選挑戦で、初の銅メダルを獲得。着実に、一歩ずつ、しかし驚くほどのスピードで成長を続ける19歳にとって、嬉しくもあり、だからこそ悔しさも残る大会だった。
「メダルは嬉しいですが、フリーは100%の演技ではありませんでした。身体が固くなってしまって、思うような表現ができませんでした。でも『自分を信じなさい』という先生の言葉を胸に、最後まで戦い抜けた自分を誇りに思います」(千葉)
若さはじけるドナ・サマーで、SPは2位に飛び込んだ。冒頭のコンビネーションに小さな「q(4分の1回転不足)」がつき、ステップシークエンスでレベルが3にとどまったものの、それ以外はクリーンに揃えた。中でも締めのレイバックスピンは、回転速度と美しいポジションで観客を魅了し、ジャッジの9人中6人がGOE「+5」の最高評価。技術点・演技構成点ともに自己ベストを塗り替えた。
緊張が強かったというFSは、「もっと出来たはず」との思いも残る。全日本と四大陸のいずれでも転倒した3Sで、今回は回転不足を取られ、最後にきれいに決められなかったことが「ちょっと残念」と本人。それでもFSではシーズンベスト、総合では嬉しいPBを更新した。
特に「アリアナ・コンチェルト」の壮麗な旋律に乗せた、最終盤のステップシークエンスからスピン×2の流れは至福。すべてをレベル4でまとめ上げ、やはりレイバックはジャッジ6人がGOE満点をつけた。
日本女子がワールド表彰台に2選手を送り込んだのは、2018年以来。また2位坂本と3位千葉の順位合計により、日本は冬季五輪に向け、女子シングル3枠を確保した。
4位 イザボー・レヴィト(アメリカ)
1年前の銀メダリストは、いまだ怪我からの復帰途上。右足の筋力が完全には戻っていなかったという。それでもSPは3位と好発進。3Lzにエッジ不明瞭の「!」がついた以外は、すべてをクリーンにまとめた。
FS「愛の夢」は冒頭のコンビネーションで転倒し、「投げ出したい」気分にもなった。しかし素早く切り替えを成功させた。春の喜びにあふれ、春の喜びを湛えた演技は、まるで蕾が花開くようにアリーナを包み込んだ。
FSは5位、総合では4位に食い込んだ。つまり1位リウとの順位合計「5」により、来季のミラノ五輪に向けて、アメリカ女子は日本と並び最大枠「3枠」を獲得した。
「一番大変だったのは、最後までやり遂げることでした。だからこそ、やり遂げられた自分を誇りに思います。シーズンの大半を欠場し、体力的な準備は不十分でしたが、この大会を、上手く乗り越えられた。今は最高の気分です」(レヴィト)
5位 アンバー・グレン(アメリカ)
シーズンここまで全戦全勝と快進撃を続け、母国開催のワールドに優勝候補として臨んだグレンだったが、期待通りの成績は残せなかった。SPでは冒頭の3回転アクセルで転倒。今季10回飛び、成功7回・転倒ゼロだった大技のミスが響き、9位で大会を折り返した。
FSは渾身のパフォーマンス。女子で唯一挑んだ3Aを、耐えてしっかり着氷した。後半の「私にとって一番簡単な」フリップは2回転になってしまったが、最後まで戦い抜き、「自分を誇らしく思える」演技ができた。
FS単体では4位と巻き返し、総合では5位浮上。アメリカ女子が世界選でトップ5に3人並べたのは、2001年以来の快挙だった。
「全米以降、精神的に辛い日々が続きました。それでも最後に良い演技ができて嬉しいです。今日は自分のために、そして最近亡くなった人たちを偲びながら滑りました」(グレン)
6位 樋口新葉(日本)
国際舞台への完全復活を意味する、3年ぶりの世界選参戦。SPは力強いガッツポーズで締めくくり、FSの後は感涙が止まらなかった。納得の演技を2本揃え、樋口新葉は、ポジティブな思いでシーズンを締めくくった。
「今季最高の滑りが出来た」と確信した通り、SPは高得点を記録。2022年北京五輪以来となる、国際大会での70点超えだった。
冒頭のジャンプを完璧に決めると、その後も質の高いエレメンツを次々とこなしていく。開始直後の視線から観客を惹きつけるSP「デューン」の、クライマックスはやはりステップシークエンス。静と動を巧みに滑り分け、同要素は全体1位のGOEを獲得。ノーミス&オールレベル4で、SP4位につけた。
FSの「ストレンジャー・シングス」もまた、樋口は氷上で独特の存在感を放った。完全なる静寂から、命を揺さぶるようなクライマックスへ。やはり圧巻のステップシークエンスで、他を大きく突き放す1位の得点を記録した。
残念ながらジャンプではいくつかミスも。特に後半のコンビネーションで予定していた2本目をつけられなかった。ただ直後にリカバリーしたのは流石。FS6位、総合6位で大会を終えた。
「やりきりました。フリーで点数には少し悔しさも残ります。ただ点数だけではない部分、そういうところですごく頑張れたんじゃないかなと思っています。滑りきれたという気持ちでいっぱいです」(樋口)
文・JSPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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