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サイクル ロードレース コラム 2025年6月2日

悲願達成!サイモン・イェーツが7年前の悔しさを晴らすジロ総合優勝 コーイが最終ステージのスプリントを制す|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第21ステージ

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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悲願のジロ総合優勝を果たしたサイモン・イェーツ

今日だけ特別にピンク色をまとった列車から、2025年ジロ・デ・イタリア最後のステージ勝者は発射された。オラフ・コーイが西日輝くローマの道を最速で駆け抜け、背後ではチームメイトのサイモン・イェーツが、ばら色の栄光を永遠のものとした。金色に輝く螺旋のトロフィーが天高く掲げられ、スプマンテの泡とともに、3週間の長く激しい戦いが美しく幕を閉じた。

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「本当に素晴らしい形で大会を終えられた。チームのみんなも、まるで雲の上にいるみたいに、幸せな気分になっているんじゃないかな。僕たちがここで何を成し遂げたのかを、ようやく実感し始めている」(サイモン・イェーツ)

祝福のパレード、晴れた安息日

グランツール最終日らしく、日曜日の午後遅く、のんびりとプロトンは走り出した。カトリックで25年に1度訪れる「聖年」だからこそ、「希望の巡礼者たち」はバチカンにも立ち寄った。新しいマリア・ローザの持ち主は、新教皇・レオ14世の祝福を受けるという特別な瞬間も味わった。

厳粛な儀式がひとたび終われば、あとはいつもどおり。海まで行って帰ってくるパレードコースで、チームみんなで記念撮影や乾杯を楽しんだり、昨日までのライバルたちとおしゃべりに花を咲かせたり。初夏の青空の下で、ゆっくりと時間は流れた。

いよいよローマの周回コースが近づいてくると、いわゆる伝統に則って、チーム ヴィスマ・リースアバイクが隊列を組み上げた。過去6年で異なる3人のチャンピオンとともにジロ1回、ツール2回、ブエルタ5回を勝ち取ってきた現自転車界屈指の強豪は、4人目の新しい王者を擁して、集団先頭で全長9.5kmの市街地サーキットへと滑り込んだ。

総合優勝を祝う隊列を組み上げるヴィスマ・リースアバイクの面々

「これが加入を決意した理由のひとつでもある。僕はグランツールで勝つ方法を知っているチームに移籍したかったんだ。彼らは異なる選手で次々と成功を収めてきたし、チームのやり方は、上手く機能している。僕はもっと上を目指したかったし、環境の変化を起こす必要を感じていた」(イェーツ)

そして静かに1回目のラインを通過すると……それを合図に、いよいよ最終バトルに突入だ。

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最後の逃げ、最後の加速

少し前から脚をうずうずさせていた選手たちが、すかさず前方へと飛び出した。6人が今大会最後の逃げを作り上げ、悠久の時が流れるこの町を、大急ぎですり抜けていく。後方のメイン集団では、スプリントチームが舵取りに努め、大きなリードを与えまいと精を出す。

時に差は30秒に広がり、複数のチームが追走作業に駆り立てられた。スリリングな追走劇は、最終周回まで続いた。ただし、グランツール最終日のラインステージは、大集団スプリントで終わる運命にあるのだ。残り6kmで集団は再びひとつになった。

アルペシン・ドゥクーニンクとデカトロン・AG2Rラモンディアールが、最前列を奪い合った。それぞれ2023年ブエルタ最終日を制したカーデン・グローヴスと、かつてツールとブエルタで最終スプリントを勝ち取ったサム・ベネットとを連れて、猛烈に攻め上がった。

ところがラスト1.2km、ヴィスマ隊列が鮮やかに先頭をさらい取る。TT巧者のエドアルド・アッフィニが凄まじいスピードで、しかも川沿いのうねる道を完璧な軌道で突き進み、他チームの追随を決して許さない。

さらにはワウト・ファンアールトが、残り400mでバトンを引き継いだ。2021年ツール最終日にシャンゼリゼを我が物とした俊足は……「チーマ・コッピ」を越えた先でサイモン・イェーツのために力を尽くした24時間後、今度はコーイのために、軽い上り基調の最終ストレートを全力で駆け上がっていく!

あらゆる山を乗り越えて、初めての最終日

「僕らチームは毎日、その日のコースで誰が一番強いのか、誰に勝つチャンスがあるのかを見極めようとしてきた。今日は、僕のほうが良い結果が出せると判断した。だから、今日もまたワウトが僕のサポートに回ってくれて、本当に感謝してる。だって、うん、自分の前に偉大なるチャンピオンがいてくれると、仕事が少し楽になる」(コーイ)

最後の150m、ついにコーイが全力に切り替えた。そのままライバルたちに一度も並ばれることなく、先頭のままフィニッシュラインを駆け抜けた。

最終第21ステージの区間優勝を勝ち取ったオラフ・コーイ

コーイにとっては、第12ステージに続く今大会2勝目。なにより初出場の昨ジロでも区間1勝を持ち帰った23歳にとっては、初めてのグランツール完走。特に大会3週目は、ほぼ連日のように最終グルペットで耐え忍んできた末の、大きな成果だった。

「この最後の週末に体験したことは、本当に信じられないような出来事だった。昨日のサイモンの走りもクレイジーだと思ったけど、今日はチーム全体がスペシャルだった。3週間の終わりで脚は痛んだけど、おかげでプラスの力をもらえた」(コーイ)

そんなチームのヴィスマにとっては、ファンアールトの1勝(第9ステージ)も合わせて、今大会3つ目の区間勝利だった。また4年前のツール以来、グランツールで欠かさずステージ勝利を積み重ねており、改めて高く安定したチーム力を見せつけた。

すべての道は、ローマへと続いていた

3週間前にアルバニアから船出した2025年ジロは、159選手とともに、ローマで走り終えた。

初日から21日間マリア・チクラミーノを守り続けたピーダスン

区間4勝、マリア・ローザ着用5日と初日から大暴れしたマッズ・ピーダスンは、なにより21日間マリア・チクラミーノ首位を貫き通した。ロレンツォ・フォルトゥナートは3日目にマリア・アッズーラを羽織ると、11日間かけてこつこつポイントを積み重ね、しっかりと最後まで守り続けた。

サイモン・イェーツは、今回はたったの1日しか、マリア・ローザを満喫できなかった。ただこの1日に、7年越しの喜びがすべて詰め込まれていた。2018年にマリア・ローザを失ったあの時から、ずっとこだわり続けてきたジロの栄光が、ついに手に入った。

「僕たちはみんな、果たして自分が正しいことをしているのかどうか、正しい道を歩んでいるのかどうか、常に疑問を抱きながら生きている。僕だって、ああ、そろそろ、他に目を向けたほうが良いんじゃないか……と考えたことだってあった。でも、僕は走り続け、再びここに戻ってきた」(サイモン・イェーツ)

前日はフィニッシュ直後から記者会見の終わりまで、あふれ出る涙が止められなかったサイモンだが、この日は笑みがこぼれ続けた。前ステージで激しくやり合った2人、2位イサーク・デルトロと3位リチャル・カラパスもまた、総合表彰台の上で揃って笑顔を見せた。

激闘を終えて表彰台に登るS・イェーツ、デルトロ、カラパスの3名

「別の選択をしておけばよかった、と思う部分はある」と21歳は正直に打ち明けつつも、「でも、僕が取り続けてきた選択の結果、僕はここに立っているんだ」とマリア・ビアンカ姿で胸を張る。カラパスもまた自ら後輩に握手を求め、遺恨を残さず。4度のジロ出場で3度目の表彰台に立ち、しかも2023年に現チームに移籍してからは初めての表彰台を、素直に楽しんだ。戦いの時間は終わった。

文・宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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