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サイクル ロードレース コラム 2025年5月25日

命の危機から奇跡の復活を遂げジロに帰ってきたベルナル。コロンビアの雄は再び表彰台に挑む|ジロ・デ・イタリア2025

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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コロンビアナショナルチャンピオンジャージを着用しジロに帰ってきたベルナル

コロンビア王者としてジロに帰ってきたベルナル

2019年ツール・ド・フランスでコロンビア勢初の総合優勝。そしてパンデミックを挟んで2021年ジロ・デ・イタリア制覇とキャリアの絶頂期をむかえたエガン・ベルナル。しかし、そんな彼を悲劇が襲う。2022年1月にコロンビアで交通事故に遭い、生死の境を彷徨う大怪我を負ってしまったのだ。

何とか一命を取り留めたものの、選手として復帰することは絶望的かと思われた。が、必死のリハビリを経てロードレースに復帰すると、2025年2月のコロンビア選手権で4年ぶりの勝利となるロード&タイムトライアル2冠。祖国の国旗をあしらったナショナルチャンピオンジャージを着用し、今大会イタリアの地にベルナルが帰ってきた。

ベルナルのキャリアはイタリアから始まった

イタリアには思い入れがある。マウンテンバイクのジュニア世界選手権で2位になったベルナルは、19歳の時にロード転向。南米大陸から渡った先がイタリアだった。2017年に若手選手の登竜門と言われるツール・ド・ラヴニールで総合優勝。2018年に英国のスカイ(現イネオス・グレナディアーズ)に引き抜かれた。初出場の2018ツール・ド・フランスではアシスト役としてゲラント・トーマス(英国)の総合優勝、クリストファー・フルーム(英国)の総合3位の立役者になる。

2019年、22歳のベルナルはツール・ド・フランスを欠場する予定だった。ところが運命のいたずらか、思わぬ事態が連続する。シーズン当初、チームはベルナルをジロ・デ・イタリアのエースに起用する計画で、ツール・ド・フランスはトーマスとフルームの両エースが乗り込むはずだった。ところがジロ・デ・イタリア直前にベルナルが鎖骨骨折して、出場を断念。そしてツール・ド・フランス開幕前に今度はフルームが複数カ所の骨折。驚異的な回復を見せたベルナルは、まずツール・ド・スイスで圧勝。チームはツール・ド・フランスにトーマスとともにベルナルを出場させることを決めた。

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コロンビアの悲願を36年の時を経てベルナルが実現

ツール・ド・フランスは1983年、「カフェドコロンビア」が大会協賛することになり特例でコロンビアのアマチュア選手で編成されたチームを初出場させた。標高2000mの高地で生まれ育った選手らは上りが圧倒的に強かった。1984年にルッチョ・エレラが初のステージ優勝を挙げ、コロンビアにロードレース人気が訪れた。エレラはその後のツール・ド・フランスでマイヨ・ジョーヌを期待されたが、それはかなわぬ夢に終わった。

その悲願をベルナルが遂げた。アルプスの第19ステージ、欧州最高峰のイズラン峠を総合2位につけていたベルナルが後続に差をつけてトップ通過した。ところが峠からの下り坂が突如の降雪で危険な状態となり、レース中止。大会ディレクターは瞬時に「イズラン峠頂上を通過したタイムを総合成績に反映する」と通告。

「なにが起こっているのかまったく分からなかった。無線でレースが終わったと言われ、立ち止まったら監督からマイヨ・ジョーヌだと言われた」優勝候補として最も注目されたベルナルではあったが、こんな異例の事態でマイヨ・ジョーヌを獲得したのである。

「ツール・ド・フランス制覇はボクの勝利というだけでなく、コロンビアという国家の勝利だと感じている。ボクたちはテレビでツール・ド・フランスを見ていて、そんなスゴい世界に到達できないと思っていた。子供のころにいつか出場できたら最高にカッコいいぞと思ったけど、遠くにかなたに見えていた。でも気がついたらボクはシャンゼリゼの表彰台の真ん中にいた」

2021年にジロを制したベルナル。ピンクジャージに再び袖を通す姿を見ることはできるのか。

2021年にジロを制したベルナル。ピンクジャージに再び袖を通す姿を見ることはできるのか。

第2の故郷イタリアで再びベルナルは表彰台に挑む

第2の故郷であるイタリアでジロ・デ・イタリアを制したときには、「ツール・ド・フランスで勝ったあとは困難の連続だった。でも地に足をつけてできることを丁寧にやっていった」というベルナル。

今大会でベルナルはキーポイントとなった第9ステージでまずまずの走りを見せて総合7位に浮上。第14ステージを終えた時点では、首位と3分38秒差の9位となっているが、まだまだ表彰台を狙える位置と言っていいだろう。ここからジロは終盤戦へと向かうが、上り坂に強いベルナルがどんな走りを見せるのか? ベルナルが山岳で動けば、デルトロもアユソも、ティベーリログリッチもこのコロンビアチャンピオンを追わざるを得ないはずだ。

文・山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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