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サイクル ロードレース コラム 2025年5月21日

ダーン・ホーレが個人タイムトライアルで一番時計…デルトロが首位を守るも僚友アユソが25秒差に詰め寄る|ジロ・デ・イタリア2025 レースレポート:第10ステージ

サイクルロードレースレポート by 山口 和幸
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ホーレが個人タイムトライアルでトップタイム、悲願のグランツール初勝利

ホーレが個人タイムトライアルでトップタイム、悲願のグランツール初勝利

第108回ジロ・デ・イタリアは2025年5月20日、ルッカ〜ピサ間で第10ステージとして距離28.6mの個人タイムトライアルが行われ、リドル・トレックのダーン・ホーレ(オランダ)がトップタイムを叩き出してグランツール初優勝を果たした。総合成績ではマリア・ローザのイサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ・XRG)が2分22秒遅れの区間36位に入ってその座を守ったものの、チームメートのフアン・アユソ(スペイン)に25秒差に詰め寄られた。

ピサの斜塔が個人タイムトライアルを見守った

5月9日に開幕したレースは大会4日目がノーレースだったが、これはアルバニアからイタリアへの移動に費やされたので、例年のような1回目の休息日は前日。ここまで9ステージを戦った選手たちはイタリア半島の南端でつかの間の休息日を過ごして、大会第2週に挑むことになった。第10ステージは距離28.6mの個人タイムトライアルだ。

アルバニアの首都ティラーナで行われた第2ステージが距離13.7kmの個人タイムトライアルだったが、今大会のタイムトライアルはこの2ステージのみ。合計距離は42.3kmとこれまでになく短い。独走力のあるオールラウンダーにとっては好ましくない距離だろうが、山岳を得意とする選手にとってはうれしい設定だ。しかもこの日を終えれば、あとは波状的に山岳ステージが組み込まれている。

歴史的な城壁都市ルッカを出発し、世界的に有名なピサの斜塔がゴール地点に

歴史的な城壁都市ルッカを出発し、世界的に有名なピサの斜塔がゴール地点に

コースはイタリア好きの観光客なら確実に魅了される舞台設定だ。城壁都市ルッカでは城壁の上の遊歩道を走り、ジロ・デ・イタリアが初訪問してから100年目となるピサでは、世界中の誰もが知るピサの斜塔でフィニッシュする。そのコースはほぼ平坦で、真ん中ほどにわずかな丘がある。全体的に直線が多いのでハイペースなレース展開が予想されていた。中間計測地点は8.3km地点(残り20.3km)と20.5km地点(残り8.1km)の2カ所にある。

171選手が1人ひとりスタートしていき、フィニッシュまでの所要タイムを計測する。個人総合成績で最下位のアレクサンダー・クリーガー(ドイツ、チューダー・プロサイクリングチーム)から1分おきにスタートしていく。最後の15選手は3分間隔となり、ナンバーカードの下一桁に1がつくエース選手がずらりと並んだ。エース以外ではバーレーン・ヴィクトリアスのダミアーノ・カルーゾ(イタリア)が最後から11人目、チーム ヴィスマ・リースアバイクサイモン・イェーツ(英国)が最後から6人目だ。UAEチームエミレーツ・XRGはアダム・イェーツ(英国)、ブランドン・マクナルティ(米国)、アユソ、デルトロと4選手が上位にいるので、サポートカーとスタッフも大忙しとなった。

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結婚式に出席したこともあるピサで運命の大勝利

9番目に出走したチーム ジェイコ・アルウラーのマイケル・ヘップバーン(オーストラリア)がまずは33分20秒、平均時速51.480kmという好タイムでゴール。これがその後に登場する選手たちの目安となった。続いて22番スタートのイーサン・ヘイター(英国、スーダル・クイックステップ)がすばらしいスピードを見せて走る。ヘイターは序盤こそ抑えめに走ったが、第2チェックポイントからゴールまでは全選手の中で最も速いペースで走行し、32分40秒でゴール。この時点で暫定トップに立った。結果的にヘイターはその後2人に抜かれてしまうが、ステージ3位という結果はグランツール大会で自身初の殊勲となった。

ピサで結婚式に出席したホーレが、運命的な大勝利を飾った

ピサで結婚式に出席したホーレが、運命的な大勝利を飾った

オランダのタイムトライアルチャンピオンであるホーレは、ナショナルチャンピオンジャージを着用して43番目にスタート。この時点の天候は曇りだったが、徐々に雨雲が接近。有力選手たちの出番となる頃には路面が濡れることも予想された。

そしてホーレがヘイターのタイムを上回った。プロ勝利は2024年のオランダのタイムトライアル選手権のみで、通常はチームエース、マッズ・ピーダスン(デンマーク)のアシスト役を務める。この日は自らのために走り、まずはトップタイムでこれからゴールする選手たちを待つことになった。

「このタイムトライアルに集中した。ホットシートに座ったとき、チームにこれからの天気を尋ねると、総合順位の選手たちが登場するころには雨が降るという答えだった」とホーレ。

「もし昨日、タイムトライアルで誰が勝つかと聞かれたら、私はジョシュア・ターリングだと答えただろう。彼は今、最高のタイムトライアリストだ。プリモシュ・ログリッチも最近いい成績を残している。この2人に対抗できるようにコース中盤にある丘で差をつけられるように走った。スタートしてからもハイペースだったが、この小さな上りのために少しだけ力を温存し、そこでプッシュしたのでタイムはよかった」(ホーレ)

ターリングが首位発進も、ホーレに及ばずステージ2勝目を逃す

ターリングが首位発進も、ホーレに及ばずステージ2勝目を逃す

この日の優勝候補は第2ステージの個人タイムトライアルを制しているイネオス・グレナディアーズのジョシュア・ターリング(英国)だ。77番目に登場し、第1計測ポイントでトップになった。しかし途中のラップがホーレを上回ることができず、6秒90遅れの2位でゴールし、ステージ2勝目を逃した。第10ステージを制したのはホーレだ。

「信じられない。感情があふれていて、たくさんの人に感謝したい。今週ずっと調子がよくて、この日を目指していたけれど、優勝を達成するとは思ってもいなかった」というホーレはグランツール初勝利を手に入れた。

「総合上位の人たちは雨に見舞われて、それが記録に大きく影響したけれど、同じ条件で走ったジョシュア・ターリングを倒すことができた。彼を打ち負かせたことに驚いている。彼は世界で最も優れたタイムトライアル選手の一人だからね。コース後半はうまくいって、彼のペースを上回ることができた。ジロ・デ・イタリアの勝利は特別だ。本当にうれしい!」

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オランダ選手がジロ・デ・イタリアのタイムトライアルで勝ったのは2018年にエルサレムで行われたステージでトム・デュムランが勝って以来。オランダ勢のステージ勝利は、第4ステージでのチーム ピクニック・ポストNLのカスペル・ファンウーデンを含めて通算35回目。またリドル・トレック勢としてはピーダスンの3勝を加えて今大会4勝目。2024年の3勝を上回る快挙になった。

「雨予報は気にしなかった。ジロ・デ・イタリアでステージを勝つのは信じられないほど素晴らしいこと。これは何度も夢見たことだ。いつか達成できるとは思っていなかった。だからすごく幸せで誇りに思っている。タイムトライアルは自分自身でやらなければならないからね。多くの人が自分自身を信じるように言ってくれた。実はこの町で勝ったというのはちょっと面白い。私はピサで結婚式に出席した。イタリアは本当に美しい国で、ここで勝ててうれしい。とてもクレイジーで予想外」(ホーレ)

マリア・ローザを守ったデルトロはエースでいられるのか?

そして総合の上位選手の出番となると雨が降り始め、それがタイムに影響した。第9ステージの未舗装区間でコースアウトやパンクに見舞われ、2分25秒遅れの総合10位に落ちたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は、1分14秒62遅れの区間17位。それでもアユソとのタイム差を19秒挽回し、総合成績で1分18秒遅れの5位に浮上した。

マリア・ローザを着用した最終出走者のデルトロ

マリア・ローザを着用した最終出走者のデルトロ

マリア・ローザを着用した最終出走者のデルトロはこの種目をそれほど得意としていないため、2分22秒08遅れの区間36位。総合2位アユソとの差は1分13秒から25秒へ。総合3位アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)との差は1分30秒から1分01秒へ。

「崩れることがなかったので今日はこれでよかった。濡れたコーナーでリスクを取らなかったので、総合成績の順位はそのままだった」というデルトロだが、表情はさえない。

「チームメートの全員が総合成績の上位にいる。チームにとって素晴らしいことで、それは大きな意味がある。チームマネージャーやスポーツディレクターが私にマリア・ローザを維持させるか、チームメートのためにレースをするかを指示することになる。私はすべてに満足しているので、レース展開に依存する。ジロ・デ・イタリアを勝つことができると信じたいけど、シエナまでのステージのように史上最高の脚が必要だ。そんな日々が今後のステージであることを願っている。明日、マリア・ローザを持って起床できるけど、寝ることができるのかが問題」と意味深な口調のデルトロ。

ヴィアレッジョ〜カステルノーヴォ・ネ・モンティ間の185kmで行われる第11ステージは油断できないアップダウンステージ。レースはまだ折り返しに過ぎない。

文・山口 和幸

山口 和幸

ツール・ド・フランス取材歴30年超のスポーツジャーナリスト。自転車をはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い、東京中日スポーツ、ダイヤモンド・オンライン、LINEニュース、Pressportsなどで執筆。日本国内で行われる自転車の国際大会では広報を歴任。著書に『シマノ~世界を制した自転車パーツ~堺の町工場が世界標準となるまで』(光文社)、講談社現代新書『ツール・ド・フランス』。青山学院大学文学部フランス文学科卒。

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