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サイクル ロードレース コラム 2025年4月29日

ポガチャルが伝統の勝負坂ラ・ルドゥットで抜け出し独走勝利、リエージュ3勝目【Cycle*2025 リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ:レビュー】

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

優勝ポガチャル、2位チッコーネ、3位ヒーリー

鮮やかに駆け抜けてきた春を、美しき勝利で締めくくった。4月最後の麗らかな日曜日、タデイ・ポガチャルが独走でリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3勝目をあげ、自身にとって9つ目のモニュメントタイトルをつかみとった。

「シーズン序盤をこんなふうに終えることが出来て、最高の気分だ。今季ここまですべてが上手く行ったし、完璧だった。ただただ嬉しい」(ポガチャル)

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終わってみれば、1年前とまったく同じ場所……フィニッシュまで残り34.8km、伝統の勝負坂ラ・ルドゥットの上り半ばで、勝利へのアタックは振り下ろされた。もちろん並み居るビッグチームたちが、この春最後のチャンスに、最大限の抵抗を試みなかったわけではない。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

ブリッジを試みたユンゲルスとフォス

水曜日のラ・フレーシュ・ワロンヌでも積極的に動いたイネオス・グレナディアーズから、元リエージュ覇者ボブ・ユンゲルスと元個人TT世界王者トビアス・フォスとが、レース半ばで前方へ飛び出した。残念ながら、5分半先を走っていた逃げ集団への合流は叶わず、50kmほどの努力の果てに、残り85kmでプロトンへと引きずり降ろされた。

スタート直後にできあがった12人の逃げに、バーレーン・ヴィクトリアスは、元ブエルタ3位ジャック・ヘイグを送り込んでいた。レース後半にいよいよアップダウンの連続に突入し、逃げとの差が40秒ほどに縮まると……残り75km、エースのペリョ・ビルバオがブリッジを企てた。イネオスのカルロス・ロドリゲスも、すかさず反応を見せた。ただ、冷静にUAEがコントロール権を奪取し、再びメイン集団に秩序を強いたのだった。

4週連続で日曜日の表彰台を賑わせてきたリドル・トレックは、勝負所の接近とともに、意欲的に隊列を走らせた。下りのたびに、チューダー・プロサイクリングチームは最前列でスピードを上げた。肝心のラ・ルドゥット登坂口では、あらゆるチームによる熾烈なポジション争いをかいくぐり、EFエデュケーション・イージーポストが先頭を奪った。

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【フィニッシュシーン】リエージュ~バストーニュ~リエージュ|Cycle*2025

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

ラ・ルドゥットの手前でクイックステップの姿は前方で見かけなかった

「ラ・ルドゥット突入へ向けて、クレイジーなスプリントが繰り広げられた。だから位置取りが非常に重要だった。クイックステップの姿は前方で見かけなかったけど、EFも、トレックも、トム(ピドコック)も前にいた。ペースはとてつもなく速かった」(ポガチャル)

ポガチャルと並ぶリエージュ2勝を誇り、一騎打ちが期待されたレムコ・エヴェネプール擁するスーダル・クイックステップは、レース前半、UAEと平等に集団牽引作業を担っていたはずだった。

ところが起伏を繰り返すうちに、五輪金メダリストの存在を示すゴールドのヘルメットが、前線から見えなくなった。ラ・ルドゥットに突入する頃には、エヴェネプールは、メイン集団の前から50番目前後にまで後退していた。

一方の世界チャンピオンは、チームメイトの手厚い保護を受け、好ましいポジションにつけていた。アタックのぎりぎり直前まで、ドメン・ノヴァクとフェリックス・グロスシャートナーが、厳しいテンポを刻んでいた。アタックの瞬間さえも、パヴェル・シヴァコフとブランドン・マクナルティが、集団の最前列を引いていた。

ポガチャルに引き金を引かせたのは、むしろ前に競り上がってきたEFだったのかもしれない。1年前のラ・ルドゥットで、最後までポガチャルにしがみついたリチャル・カラパスの所属チームであり、4日前のラ・フレーシュ・ワロンヌで、残り500mからのアタックを決意させたのもまた、派手なピンクジャージのベン・ヒーリーだった。ほんの一瞬だけ、ポガチャルは、EFの背後に追いやられた。

それが1年前とまったく同じ場所……フィニッシュまで残り34.8kmだった。ポガチャルはするするっと前へ抜け出した。サドルに腰を下ろしたまま。凄まじいスピードで。

「特に予定していたわけではないんだ。ただものすごいペースでレースが進んできたせいで、多くのチームがアシストをほとんど残していないことも見て取れた。だから、うん、ちょっと脚を試してみようと思ったんだ。頂上でどれだけ差をつけられるか見てみよう、その後にそのまま行くかやめるかを考えよう、ってね」(ポガチャル)

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

シッティングのままアタックしたポガチャル

ジュリオ・チッコーネやジュリアン・アラフィリップは、慌てて追いかけ始めた。ベン・ヒーリーもすぐに続き、トム・ピドコックもスピードを上げた。複数の選手が全力でもがいたが、10%を超える激勾配の上で、誰ひとりとしてポガチャルの後輪をとらえられなかった。頂上では10秒のタイム差がついた。

実のところ、ラ・ルドゥット頂上にたどり着いたポガチャルには、正確な情報がなかった。上りながら何度も振り返ったものの、誰が追いかけてきているのかも、どれだけタイム差がついたのかも、まったく分からなかったのだという。

「振り返っても何も見えなかった。しかも路上はバイクや車だらけで、沿道にはたくさんの観客がつめかけていたから、無線は何も聞こえなかった。だから確信は持てなかった」(ポガチャル)

もちろんアムステル・ゴールドレースでの失敗を、ポガチャルもチームも繰り返すつもりはなかった。1週間前は、残り43km地点で独走を開始し、素早く30秒差をつけながらも、エヴェネプールとマティアス・スケルモースに残り10kmを切った先で追いつかれた。だからこそ姿の見えないエヴェネプールに対しても、「もしかしたら単純に体力をセーブしていただけなのかもしれない」と、決して警戒心を解かなかった。

「パヴェルとブランドンの調子が良かったのは分かっていた。だからたとえ最悪のシナリオになったたとしても、僕はライバルの後輪にくっついて、彼らが僕のところに戻ってくるのを待って、後はそのまま予定通りにレースを続ければいいと思っていたんだ。最終的には、あれで、十分だったんだけど」(ポガチャル)

ほんの少しずつしか、後続との距離は開かなかった。それでも上りで畳み掛け、下りでも攻め続け、集中力を切らさず、確実にポガチャルはタイム差を広げていった。チッコーネ、アラフィリップ、ヒーリー、ピドコックも、すぐに協力体制を築けたわけではなかった。後方に取り残されたエヴェネプールは、誇り高く最後の力を振り絞るも、むしろ周囲の反応にいらいらさせられるだけだった。なにより後方に残ったチームメイトのマクナルティが、集団を上手く翻弄し続けた。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

恋人ウルシュカ・ジガートの亡き母に勝利を誓う

残り15km、この日最後の上りラ・ロッシュ・オ・フォーコンへ取り掛かる頃には、リードは1分18秒まで広がっていた。後方の関心はすでに表彰台の残す2段を巡る争いへと移行し、ポガチャルは、決して気を抜かずひたすら無心でフィニッシュを目指した。最終的には大会史上最速の時速41.983kmで、1892年に誕生した最古参「ラ・ドワイエンヌ」を走り終えた。

スタート前のリエージュで、ナンバー「1」のゼッケンにマジックで「For you, D.(ハートマーク)」と書き込み、恋人ウルシュカ・ジガートの亡き母に勝利を誓ったポガチャルは、フィニッシュ地のリエージュで、昨年と同じように天を指差した。2年連続3度目のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ制覇だった。

ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで、ライバル2人をまんまと蹴落としたチッコーネとヒーリーが、1分03秒後に、フィニッシュにたどり着いた。チッコーネにとっては昨秋のイル・ロンバルディアに続くモニュメント表彰台で、つまりリドル・トレックは、今季モニュメントの4分の3で台乗りを果たしたことになる。また2年前のリエージュは2秒差で4位に泣いたヒーリーは、とうとう念願のトップ3入り。

その後7秒後に40人ほどの大集団がなだれ込み、さらに遅れること約2分、エヴェネプールは静かに苦しみの1日を閉じた。「僕はロボットじゃない」とも、「決して病気などではなかった」とも語る。大怪我の復活からわずか4戦目。エヴェネプールのシーズンは始まったばかりなのだ。6時間のレースを戦い抜くには、単純に、いまだ調整や実戦が足りなかっただけ。

対するポガチャルにとっては、リエージュこそが、シーズン前半戦の最終戦だった。現役としては単独最多、そして史上3位タイとなる9つ目のモニュメントタイトルを手に、ほんのわずかなバカンスに入る。その後はツール・ド・フランス4勝目へ向けて、本格的な調整に入る。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ

白壁が映えるコート・ド・サン・ロッシュ

ちなみにポガチャルは初戦2月中旬のUAEツアーから通算14日間走り、今回が7勝目(うち1つは総合優勝)。現時点ではティム・メルリールと並び今季の勝利数トップタイにつける。3月8日のストラーデ・ビアンケ以降はワンデーのみに集中してきたが、あるときはマチュー・ファンデルプールとやり合い、またあるときはエヴェネプールとしのぎを削り、参戦7戦・優勝4回・2位2回・3位1回という驚異的な成績を残した。

「勝利……これ以上に美しいものなんて存在しないんだ。でも、パリ〜ルーベでの経験は素晴らしかったと、どうしても認めざるを得ない。だって、あの場所で、僕にあんなレースができるなんて想像さえしていなかったから。この春はたくさんの素敵な思い出ができた。完璧なクラシック転戦だった」(ポガチャル)

すなわち今季、ここまで4つすべてのモニュメントで、ポガチャルは表彰台に上がってきたことになる(ミラノ〜サンレモ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン優勝、パリ〜ルーベ2位、そしてリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝)。ちょうど1年前のリエージュ優勝と、秋のイル・ロンバルディア優勝も含めると、モニュメント6大会連続表彰台であり、これは正真正銘、あのエディ・メルクスさえ成し遂げていない史上初の快挙である。もしも10月のイル・ロンバルディアで、ファウスト・コッピにも不可能だった5連覇をポガチャル成功させた場合……10回目のモニュメント制覇に、年間モニュメント3勝に、さらには年間5大モニュメント全表彰台という、人間離れした記録にさえ手が届く!

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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